医者は『神様』? 患者は『お客様』?
医療者と患者は、基本的に対等な立場であり、治療のためには、パートナーシップ、信頼関係が絶対必須です。
ホテルの従業員と客の場合は、主従関係が明確で「お客様」と呼ばれることに違和感を抱きませんが、本来対等であるべき医療者が、患者を「お客様」あつかいすることには大いなる違和感を覚えます。
患者を普通に「患者さん」と呼んでいた時代から、いつの頃からか「患者様」と呼ぶ病院・医院が増えて、本来対等であるべき関係に歪みが生じてきています。また『患者様』を『お客様』と勘違いした一部の人が「誤った権利意識」や「変なお客様意識」を持つようになり、さまざまなトラブルの原因となっています。 医療者へのクレーム、理不尽な要求、迷惑行為、暴言・暴力、ネット掲示板での中傷、慰謝料や損害賠償請求、告訴等がエスカレートしてきています。そして今「患者様」という呼び方を見直す動きも拡がってきています。病気を治し、命を助ける医者は、頼りになる「神様」のような存在として、「お医者様」と呼ばれていた時代もありました。しかし実際のところ、医者は神様ではありません。
医者には、治せない病気がたくさんあります。医者の行う医療行為に絶対はなく、医療行為には、常にある程度のリスクがつきまといます。また医者は患者さんの協力なくして病気を治すこともできません。生活習慣の改善もせずに、医者が処方した薬だけで病気は治らないのです。
医者と患者のどちらが傲慢な場合、治療は絶対上手くいきません。医療というのは消費サービスではなく、医者と患者の相互信頼関係によって作り上げてゆくものです。
医者が病気を治すのではなく、病気を治すのはあくまで患者自身。その手助けをするのが医者の役目です。医者は「神様」ではなく、患者は「お客様」ではないのです。
患者が良質な医療を受けるためには、医者と対等な立場で、自分の症状をしっかり伝えることが必要です。気になることは些細なことでも相談してください。気をつかいすぎてはいけません。患者さんの何気ない一言が診断のヒントになる事もあります。
気持ち良く医者とコミュニケーションをとるためには、少し工夫が必要です。外来ではどうしても一人当たりの診察時間が限られるため、医者は、患者にくどくどと要領を得ない長話をされるのを嫌います。患者は、あらかじめ病状や質問等を簡潔にまとめて診察に望んだほうが、医者の的確なアドバイスを引き出すことができます。受診時には、病気の経過や疑問点をメモにまとめて、それを受付で渡しておくのも上手な受診方法です